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【カーヴ・リトロン(Cave LITRON)】ちいさな農家の手づくりワインを届けるまちのちいさな酒屋が2021/6/4(金)駒形通りにプレオープン

【カーヴ・リトロン(Cave LITRON)】ちいさな農家の手づくりワインを届けるまちのちいさな酒屋が2021/6/4(金)駒形通りにプレオープン

JR静岡駅から徒歩15分ちょっと、人宿町のすぐ近くの駒形通りにある「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」。“ちいさな農家の手づくりワインを届ける、まちのちいさな酒屋”をコンセプトにしているが、ボトルショップとしてオープンするまでの間は、ワイン&コーヒースタンドとしてプレオープン中。お店を営む安藤夫妻の奥さま、沙友里さんにお話をうかがった。

2021/6/4(金)OPEN! グルメ・駒形通り「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」

「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」はワインと出会う場所

時間の経過を感じるレトロな街並みが残り、ゆっくりとした時間が流れる駒形通りを歩く。ふと目をやると、ワイン瓶が並ぶ店内と、ガラス窓に「Wine & Coffee Stand」の文字。ふらっと中に入ってみると、やさしい表情で沙友里さんが出迎えてくれる。
店内は無骨さを残したコンクリート素材や、古材やアンティークの家具、ぬくもりを感じる雑貨などで飾られ、不思議と居心地がいい。

沙友里さんに初めてお会いしたのは、2020年秋、同じくこのコラム、NewSTANDARD編集部新店セレクションの「ひばりブックス(HiBARI BOOKS&COFFEE)」の取材のときだ。当時、沙友里さんは「ひばりブックス(HiBARI BOOKS&COFFEE)」のスタッフとして働いていて、「今年(2020年)の秋に、駒形通りにワインショップをオープンするんですよ」という話をうかがっていた。

当初2020年秋の予定だったが、それが2021年の春頃に。2021年2月にはお店の工事を進めながら、駿河町の燗酒BAR「KANZAKE JUNKIE」にて週末のみ間借り営業がスタートし、そしてようやく2021年6月にプレオープンに至った。

ひばりブックス(HiBARI BOOKS&COFFEE)の記事はこちら

「コーヒー淹れますね」と、沙友里さんが時間をかけて丁寧にフレンチプレスでコーヒーを淹れてくれた。
この日いただいたのはエチオピアの在来種の豆で中煎りのもの。フレンチプレスなので、コーヒー豆の味わいや香りはもちろん、フィルターでは濾(こ)されてしまうコーヒー豆の油分などが混ざり合い、豆本来の味が楽しめる。ほんのりとした酸味、苦味、香ばしさなどさまざまな味が混ざり合い、ドリップで淹れるものとはまた異なる味だ。
「夫も私も、ワインに興味を持った入り口はコーヒーでした。どちらも畑とひとから生まれるもの。共通するものも多いので、コーヒーをきっかけにワインにも興味を持っていただけたら嬉しいなと思ってお出ししています。」

「ひばりブックス(HiBARI BOOKS&COFFEE)」でも、バリスタとして働いていた沙友里さん。彼女が淹れてくれるコーヒーは、素朴でありながらも深い味わいで、飾らない雰囲気の沙友里さんの人柄が表れているようだ。

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「コーヒー(600円)」は、農園やつくり手ごとの違いや味わいを楽しめるようシングルオリジンで提供している。「ブレンドコーヒー(500円)」もある。写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)

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沙友里さんが手づくりしているスコーンや焼き菓子も販売。小麦粉の素朴な味わいが感じるやさしい味。コーヒーはもちろん、ワインにもあう。写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)

新型コロナウイルスの影響などもありながらも、今はライセンスが下りるのを待ちながらプレオープンというかたちで営業している。ボトルショップとしての営業が可能となった時点で、正式オープンとなるそうだ。
「小規模のつくり手さんのワインは生産量も限られますし、自然なつくりのワインは飲んでみないとわからない部分も多いと思います。まずはテイスティングを兼ねてグラスワインで味わっていただき、気に入ったものがあればボトルを購入いただくというような形にできればと考えているんです」。
店内では、ワインやコーヒー、ジュース、焼き菓子、パン(週末のみ)などがいただけるが、ワインの販売がメインになっているので、基本はスタンディングスタイルになっている。

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「グラスワイン(700円〜)」。日ごとに異なる数種類のワインを用意している

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長野県茅野市にある、長野県産小麦と自家製酵母を使ったパンをつくる「カルパ(KALPA)」のパン。ワインと一緒に軽く一杯楽しみたい。写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)


「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」の貴規さんはワインが好きすぎてワインの生産者のもとへ

長野県安曇野市出身の沙友里さんは、静岡の県立大学に進学したことから、静岡に縁を得る。
「大学ではフランス文化を学んでいました。フランスではワインが日常の中に当たり前のように存在する。そんなところに惹かれていました」。フランスを訪れたり、お酒が飲めるようになってからはワインを楽しんだりとフランスの文化に傾倒する。静岡市出身のご主人の貴規さんとは、実は大学が同じで、アルバイト先のコーヒー店が一緒だったそうだ。

卒業後は、ローカルやその土地の個性を大事にし、文化と風土を表現しているリゾート会社へ就職。広報担当として、長野や山梨などで活躍するが、貴規さんとの結婚を機に退職。貴規さんはというと、静岡の自然派ワイン店へ就職し、東京でワインを重視したビストロやレストランなどで経験を積んでいた。結婚後、東京に居を構え、沙友里さんもコーヒー店やワインに関わるお店で働く。

そして、貴規さんはワーキングホリデーのビザが取得できる30才ぎりぎりのとき、フランスでワインについてより深く学ぶため、1年間のワーキングホリデーへ。尊敬するさまざまなワインの生産者のところを周り、住み込みで仕事を手伝いながら、話を聞いて回ったり、サロン(=各地方で開かれるワインのティスティングの機会となる生産者の集まりの場)を訪れたりするなど、ワインについて造詣を深めていった。
「本当は私も行く予定だったのですが、さまざまな事情があり、一緒には行けなくて。ぶどうの収穫時期だけ手伝いに訪れる形にしました」と沙友里さんは当時を振り返る。

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貴規さんと沙友里さん。写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)

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フランスを訪れた当時の写真を見せてもらった

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フランスにあるワイン生産者の畑でのぶどう収穫の様子。写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)

「アンディ(貴規さんの愛称)は、ワインが本当に好きで好きでたまらなかったんです。ワインは誰がどうやってつくっているか、肌で感じて知りたい。そんな強い好奇心を持ってフランスへ渡りました。そして、たくさんの人に出会い、多くの感銘を受けました。ワインをつくることがどんなにたいへんか。それを身を持って体験できたことは大きいと思います」。
生産者に出会い、そして心を動かされたワイン。ちいさな農家さんが、豊かな自然の中で手を添え、心を砕き、愛情込めて育てたワインを伝える人になりたい。そんなふうに思うようになった。
「出会ったフランス人は本当に懐(ふところ)が深くて。日本からやってきた私たちを受け入れてくれました。そんな彼らに恩返しするには、日本で彼らのワインを丁寧に伝えていくしかないと思って、このお店を始めることにしたんです」。

「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」はフランスのワインカーヴ(醸造所)をイメージしてつくったお店

お店をやるなら静岡がいい。2017年、帰国し、静岡へ戻ることになった。お店をオープンするための準備をしつつ、貴規さんは静岡のワインと密接な関わりがあるさまざま飲食店で、沙友里さんもレストランやコーヒー店、そして冒頭にもご紹介した「ひばりブックス(HiBARI BOOKS&COFFEE)」で経験を積む。

お店を開くなら駒形通りがいいと考えていたという。静岡駅から歩ける距離で、中心街よりも落ち着いた立地。貴規さんの祖父母がかつて駒形通りで金物屋を営んでおり、この場所の空気感が気に入っていた。

この場所は、かつてはモーニングだけを提供する喫茶店があったという。設計・施工は、長野県の八ヶ岳の麓にある富士見町を拠点に活動している建築施工・空間デザインチーム「ノモス(Nomos)」に依頼した。もともと沙友里さんが長野県出身で、共通の知り合いがいた関係で知り合ったという。

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写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)

「ワインを飲みながら、ワインがつくられている雰囲気を感じてもらえたらと思い、それを表現してもらいました。ぶどう畑の雰囲気、ワイン醸造所の雰囲気……。そういう場所なら、ワインたちにとっても居心地がいい場所になるはずですから」。
ワインカーヴの床には、長野県の諏訪地方の鉄平石(てっぺいせき。2400〜2500万年前に八ヶ岳の火山活動により生じたマグマによって形成されたと言われている石)を敷き詰めた。フランスのワイン生産者の醸造所も砂利が敷いてあったからだ。

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カーヴはまさに洞窟(どうくつ)のような雰囲気で、店名の「Cave」に通じる。ちなみに店名の「LITORON」は、フランスの田舎の言葉で“ワイン約1リットル≒ひと瓶のワイン”という意味がある。写真提供:カーヴ・リトロン(Cave LITRON)

「『ノモス(Nomos)』さんには、月曜から木曜まで静岡に泊まってもらい、私たちも一緒に作業を手伝わせてもらいました。週1回はワインをあけ、一緒にご飯を食べて、ワインやフランスの造り手の話をして、感じて、シェアしてもらって。そして静岡の気候・風土を感じてもらいながら、まるでライブのセッションをしているような感覚でつくってもらいました」。

「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」ではワインとコーヒーとその周辺にあるものも販売

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「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」では、ワインとコーヒーとその周辺にあるものも販売している。たとえば、「ひばりブックス(HiBARI BOOKS&COFFEE)」による選書の本、静岡市駿河区八幡にある「創作珈琲工房 くれあーる」のオリジナルブレンド豆、ワイングラス、ワインに合わせたコンピレーションアルバム、スパイス、クラフトチョコなどの雑貨も置いている。

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古材や時間や手を加えた素材を使ってつくられた店内。フランスの100年前のはしご、古い椅子など、古家具や雑貨も

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長野や山梨の古道具店などで集めてきたという

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知り合いが譲ってくれたという手づくりの真空管アンプとヴィンテージのスピーカー。あたたかみのある独特の音質が耳に居心地いい

「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」を訪れる人は、ワインやコーヒーを飲みながら、安藤夫妻と話をしたり、本を手に取ったりと思い思いに過ごしていくという。
「お二人でご来店される方、お一人でご来店される方とさまざまです。静岡出身の方もいれば、県外出身の方、単身赴任の方とお客さまの層はいろいろですね。ワインを知らなかったけれど、知ってみたいと興味を持ってくださる若い方も多いですよ」。

ワインは貴規さんが訪れたフランスのものが多いものの、国で限定するわけではないとのこと。
「ワインの産地は、もちろんフランスのものが多いですが、日本、イタリア、ドイツとさまざまです。自然な形でつくっている、一人だったり家族経営だったりするような小さなつくり手さんが中心です。日本酒やビールの取り扱いも考えています」。

夜になると、「カーヴ・リトロン(Cave LITRON)」にはあたたかな灯(あか)りがともり、店内から楽しそうな声が聞こえてくる。さまざまなお店で働いてきた経験があるお二人なので、知り合いも多く訪れるという。
いずれボトルショップとして正式オープンした暁(あかつき)には、おすすめしてもらったワインをテイスティングしながら、ワインの背景を聞き、そして気に入ったものがあれば買って帰ることができるようになる。生産者の想いやつくられた背景を知れば、より一層、ワインもおいしく感じるはずだ。

紹介スポット

静岡市葵区

Cave LITRON

駒形通りにあるちいさな農家の手づくりワインを届けるまちのちいさな酒屋

更新日:2021/12/13
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