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【第19回】エイプリルフールズ(2015年)

タチの悪い、笑えない嘘はダメ。ゼッタイ。

筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、読書、お笑い、カメが大好き。特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆるい解説と小学校から上達していないイラスト(ときどき)で、好きな映画を紹介していきます。

エイプリルフールズ(2015年)

もうすぐ4月1日。エイプリルフールですね。
ここ数年、さまざまな企業が面白い嘘ネタを公開し、ネット上を賑わせています。
『womo』でも昨年、こんな楽しいエイプリルフールネタを公開していました!

【2016年4月1日『womo』のエイプリルフールネタ】

【制作秘話】


個人的には「嘘から出たまこと」になればいいのにと、けっこう本気で思っていますが……。


さて今回はそんなエイプリルフールにぴったりの映画、2015年4月1日に公開された『エイプリルフールズ』です。
ドラマ『リーガルハイ』のコンビ、脚本・古沢良太×監督・石川淳一をはじめ、音楽や撮影なども『リーガルハイ』のスタッフが再結集。
古沢良太は私の大好きな脚本家の一人。ドラマ『リーガルハイ』や『デート』、映画『キサラギ』など、軽快なテンポとセリフでひっぱり、「そう来たか~」と悶絶するようなひねりのある展開が、まぁ素晴らしい。
この『エイプリルフールズ』は、いくつものエピソードが交差し、ちりばめられた伏線が回収され、パズルのピースがひとつずつうまっていく爽快感が★★★★★。

小さな嘘が重なって、ありえない展開へと発展

ストーリーは、4月1日に起きたいくつもの小さな出来事がちょっとずつ絡み合い、ドタバタしたり、ホロリとしたり、ハラハラしたりと、ラストに向けて怒涛の展開が待ち受けているのです。

同時進行する物語は7つ。それぞれのエピソードに嘘と真実が隠されています。
「イタリアンレストランでの立てこもり事件」「熟年ロイヤル夫妻の休日お忍びデート」「ヤクザによる少女誘拐事件」の3つが軸となり、「怪しげな霊能力ばあさん」「42年ぶりに奇跡的な生還を果たした男」「自分を宇宙人だと思い込むひきこもりの少年」「とある二人の大学生」という4つのサブストーリーが絡んできます。

メインの舞台となるレストランでは、天才外科医・牧野(松坂桃李)のもとに、他人とのコミュニケーションが苦手な清掃員・あゆみ(戸田恵梨香)が現れ、「あなたの子を身ごもった。責任を取れ」と迫ります。しかし、子どもの認知はしないという牧野に激怒したあゆみは、拳銃を取り出してレストランを占拠してしまいます。

この映画を観るまでは「松坂桃李って見た目カッコイイだけで演技は普通の、よくいる俳優」なんてエラそうに思っていましたが、全力で謝罪します! 遊び人で口のうまいチャラ男を見事に演じていました。


前半はくすくす笑いが続き、後半、真相が明らかになってくるごとに涙がこみ上げてきました。

私が一番ホロッとしたのは、寺島進演じる不器用なヤクザの誘拐の話。あと、里見浩太朗と富司純子が演じるお茶目な夫婦の話も好き。

誰もがみんな、ちょっとした嘘をついたり、ごまかしながら生きているところがあり、それは自分の心を守るためでもあります。

どんな人も、笑って、泣いて、怒って、落ち込んで、ヘコんで、また笑って。
嘘をついたり、つかれたり、傷つけたり、傷つけられたり、勘違いしたり、させられたり。

そんな繰り返しでドタバタと生きる中で、知らずに誰かの運命を変えてることもあるんだなぁと、この映画を観て思いました。

「その気になれば、たいていの現実は変えられる」という言葉を、めちゃくちゃ胡散くさい占い師が言うところがまた良し。
一番、嘘をついていそうな人が実は本当のことしか言っていなかったり、正直そうな人が嘘ばかりついていたり……世の中ってそんなもんですよね。

【今日のまとめ】

私たちは子どもの頃からずっと、「嘘をつくな」と教えられてきました。
「♪ありの~ままの~姿見せ~るのよ~」も大ヒットしました。
自分にも他人にも嘘をついてはいけない、隠してはいけない、そのままの自分でいい、自分を偽る必要なんてない。
それはもちろん大切なこと。
でも、嘘が人を救うこともあるし、正直さが人を傷つけることもある。

楽しい嘘、人を笑顔にする嘘、相手のためにつく嘘ならついてもいいんじゃないでしょうか。
嘘はつくけど、秘密は守る。そして時にはダマされたフリをする。
それが『おとなの掟』。
けれど、嘘や秘密をかかえ続けることって、実はとても苦しいんですよね。


さて、なぜここでいきなり家康さんの写真なのか?
実は家康さん、嘘にまつわる名言を残しているのです。


『真らしき嘘はつくとも、嘘らしき真を語るべからず』

真実らしく語られた嘘はもはや本当のことであり、嘘らしく語られた事実は嘘と同じ。
そして、語る人間によって相手の受け止め方も変わるのではないでしょうか。
「オオカミ少年」のように普段から嘘ばかりついていると、本当のことを言っても誰も信じてくれない。
しかし、日頃の行いが正直で信頼のおける人の言うことは、嘘でも信じてしまいがち……(←これのほうが実は逆にコワイけれど)。

世の中を生き抜くためには時にはハッタリも重要で、どれだけ相手に信じ込ませるかが大事。
本当のことを言っていても、それが自信なさげな言い方だったら、誰も信じない。
嘘だろうと真実だろうと、自分の言うことを信じてもらえる、嘘だとしてものっかってもらえる、そんな人間になれ。

家康さんが言いたかったのは、こういうことなのかな……

「真らしき嘘」は、士気を高める希望みたいなものだもんね。


エイプリルフールに小粋でシャレた嘘をついてみたいけれど、嘘をつくとすぐに顔に出ちゃうタイプなので、きっとムリ……。テキトーなことは言うけど、嘘やお世辞が言えない人間のようです。テヘッ♪
……なんてこの発言がすでにもう嘘っぽいよね!



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■エイプリルフールズ(2015年)
監督:石川淳一
脚本:古沢良太
出演:戸田恵梨香、松坂桃李、ユースケ・サンタマリア、高嶋政伸

隔週水曜更新。次回の更新は4/12(水)です。

更新日:2017/4/2
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