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【第12回】「逃げ恥」平匡ロスをうめる、星野源出演作2選

便乗するは恥だが役に立つ

筆者:こしあん
映画・海外ドラマ、読書、お笑い、カメが大好き。特技はイントロクイズ(80年・90年代ソング限定)。
怖がりのくせにホラーとミステリーが大好きで、生まれ変わったらFBI捜査官になりたい。
休日にどれだけ家にこもっていてもまったく苦にならない超インドア派。
ゆるい解説と小学校から上達していないイラスト(ときどき)で、好きな映画を紹介していきます。

「逃げ恥」平匡ロスをうめる、星野源出演作2選

大旋風を巻き起こしたTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が、とうとう最終回を迎えてしまいました……。
毎週リアルタイムで視聴し、次の週までに3回は見直し、好きなシーンを何度もリピートしてしまうようなドラマは生まれて初めてでしたわ。
“ムズキュン”な展開にバタバタし、ちりばめられた名言にはらはらと涙し、楽しいパロディ演出にくすぐられ、俳優さんたちの自然な演技に感服する。
こんなにたくさんの素晴らしい要素がつまったドラマってそうそうありませんよ。

ぜひとも、『逃げ恥 THE MOVIE』を作っていただきたい!

ドラマにハマっていた方は、おそらく「逃げ恥ロス」におそわれていることでしょう。

思いっきり、ブームに便乗してお送りする今回。
ドラマを観ていない方にとっては“ぽか~ん”となるかと思われますが、ぜひDVD化されたら観てくださいね~。


Twitterで「#星野源に屈しない女の会」というのが話題のようですが、これ考えた人、天才ですね!
この気持ち、本当によくわかります!!
あくまでもドラマの「平匡さん」が好きなのであって、決して、星野源が好きなのではない。
星野源を好きになったら、なんか負けたような気がする。
ハマってしまったら、もう元に戻れないような気がする。
……などなど、みんな面白いですね~。

私が星野源を知ったのは、ドラマ『11人もいる!』やNHKのコント番組『LIFE!』です。個性的で味のある面白い役者さんが出てきたなぁくらいの気持ちでした。
「きゃあぁぁぁ、カッコイイ~」というようなキャラクターではないですよね。
ムロツヨシと同じような存在です……なんて言ったら、ムロさんに失礼ですかね(>_<) 褒め言葉なんですけどね。

それがどうして!
このドラマを見るたびにどんどん、「あれ、おかしい……私、星野源が気になってしょうがない……。いや違う、平匡さんがかわいいだけだ。ドラマが面白すぎて、ちょっと脳内がパニックを起こしているのだ」という症状に陥っています。
エッセイを読みふけり、YouTubeで歌っている映像を見まくり、ネットで「星野源」と付く記事を読みまくり、家にラジオがないので、どうやったら「オールナイト・ニッポン」が聴けるのか悩み、このままではヤバイ、ハマってしまう! と思ってあえて距離を取り、「ウコンの力」のCMからは目をそらす……そんな毎日だけど、まだギリギリ屈してはいない!!!

そんな「平匡ロス」の方々の心の隙間をうめる「浸透力、ハンパなーーーーーーーい!!」映画を2本、紹介したいと思います。

箱入り息子の恋(2013年)

星野源が演じるのは、市役所に勤める几帳面で超まじめな男・健太郎。35歳で実家暮らし、彼女いない歴=年齢。内気で愛想がなくて無口。お昼ごはんも自宅に帰ってきて食べるほど、職場と自宅の往復だけの淡々とした毎日を送っている。
父(平泉成)と母(森山良子)の三人暮らしだがほとんど会話もせず、自室にこもってひたすらテレビゲームをしており、唯一の友達はペットのカエルだけ。

……これ、80%平匡さん!! 黒縁メガネかけているところも一緒!!!

そんな息子を見かねた両親が、親同士が婚活する“代理見合い”に参加し、後日、本人同士をまじえて正式なお見合いをすることに。
相手の女性・奈穂子(夏帆)は、幼い頃の病気で目が見えなくなり、会社を経営する父(大杉漣)と母(黒木瞳)の裕福な家庭で大切に育てられている。
奈穂子の父は、仕事ができて経済力はあるけれど、傲慢な態度で周囲の人間を見下している。当然、健太郎のことをまったく気に入らず、ひどい言葉をなげかける。
そんな状況でも奈穂子を気遣いつつ、自分の気持ちをきちんと伝える健太郎。
このシーンで、まず、号泣します!
お見合いの場では冷静だった健太郎が、自宅に戻ると、悔しさのあまり部屋の中で暴れるシーンで、さらに号泣……。

胸が痛くなるような始まりながらも、奈穂子の母は理解があり、健太郎の優しさに惹かれている娘の気持ちを一番に考えているので、健太郎と奈穂子の恋を応援してくれるのです。

そして、穏やかでほっこりするようなお付き合いが始まります。
二人で牛丼屋さんに行くシーンと、目が見えない奈穂子が一人で牛丼屋さんに行き、それを健太郎が見守るシーンでも号泣……。

35歳にして初めて訪れた恋に悪戦苦闘する姿は、ぶざまで滑稽だけれど、とてもまっすぐでピュア。
今まで何かに感情的になってぶつかることもなかった男が、自分の殻をぶち破り、泣き叫び、転びながらも、立ち向かっていく。

それを星野源が演じているんですよっっ!! 悶絶せずにいられますかっっっ!!!

しかし、後半になると「なぜそこでそういう行動に走る?!」という健太郎の気持ち悪さが随所に見られます。“変態と情熱のあいだ”……笑
星野源は、そういう部分の表現力が抜群なのだと思います。

それから、ちょっとドギマギしちゃうラブシーンもあるので、気絶しないように気を付けてくださいね!

盲目の女性という難しい役どころを演じた夏帆の透明感ある演技も見事です。

地獄でなぜ悪い(2012年)

最初にお知らせしておきますと、この映画は前回ご紹介した『ラブ&ピース』も手掛けた鬼才・園子温監督の作品なので、かなりハチャメチャな内容です。
血みどろのヤクザ映画で、首とか腕とか足とかスパスパ切れて飛んだりするので、そういうのが大丈夫な人はぜひ、観てみてください。

“和製 キル・ビル”みたいな映画です。刀を振り回す二階堂ふみがかっこよすぎる~。

♪全力 歯ぎしり レッツゴー!
 ギリギリ 歯ぎしり レッツフラーイ!
の曲が頭から離れなくなります。

ヤクザの組長・武藤(國村隼)は、娘・ミツコ(二階堂ふみ)を主演にした映画を撮ろうと画策していて、通りすがりにたまたま巻き込まれるのが、星野源演じる公次。
ミツコは子どもの頃、歯みがきのCMで人気があった子役で、当時それを見ていた公次はミツコに恋をしており、とんでもない騒動に巻き込まれながらも、彼女を助けようと奔走することに。

少年時代から自主映画を撮り続け、いつか一本の最高傑作映画を撮ることを夢見て、そのためなら死んでもいいと思っている男・平田(長谷川博己)と、ミツコのファンでもある、敵対するヤクザ組織の組長・池上(堤真一)も巻き込んで、誰もがみんな命懸けの実録ヤクザ映画を撮ることになる。

「何の関係もないのに巻き込まれる冴えない男」というのがハマりすぎる星野源。
気弱な男の極限状態ぶりに笑い、覚悟を決めてからは男らしく、命懸けで闘おうとする姿に悶絶!!!


昨今の息苦しい社会や固定観念をぶち破り、あふれ出る映画愛を描いた、命懸けの血まみれエンターテインメントです。


それから、この映画のエンディング曲は、星野源作詞・作曲による同タイトル曲。
くも膜下出血で入院・闘病生活をしていた時の気持ちが表現されています。

ビクターエンタテインメントの公式チャンネルに、この曲のPVがあります。

このPVがとても面白くて素晴らしい。
星野源がのび太に……!? ちゃんと口元にホクロがあるのがいい!

嘘でなにが悪いか 目の前を染めて広がる
ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ
作り物で悪いか 目の前を染めて広がる
動けない場所からいつか 明日を掴んで立つ

このフレーズが好きです。

嘘や作り物(妄想や想像)の存在が、つらい状況にある人間を救い
地獄のように苦しい経験が人を強くし、悲しい思い出や記憶に打ち勝ち
明日へと立ち上がる勇気をくれる。

壮絶な闘病生活を乗り越えて復帰し、大活躍中の星野源。
入院中の苦痛はエロい妄想で乗り切ったそうです……笑

過去の苦しみや悲しみを糧にして自分らしさを創り出し、笑いのある表現へと着地させるところが、本当に素晴らしいと思います。

元々そんなに身体は強くないのに、頑張りすぎてしまうようなので、どうか身体を大切に、末永く、その魅力をふりまいてほしいものです。

【今日のまとめ】

この二つの映画に共通すること。
それは、冴えない男が大切な女性のためにがむしゃらに奮闘すること。
滑稽だけど胸を打つ、そしてちょっとかっこよく見えてくる。

あと、どちらも星野源がボコボコに殴られて顔が変わる…。


『逃げるは恥だが役に立つ』の平匡さんもそうですが、はじめはコンピュータのように無表情で、自尊感情の低かった男の人が、少しずつ心を開いて笑顔を見せ、自信をつけ、成長していく姿に、観ている者は応援せずにはいられなくなるんですね。


そんなにイケメンすぎない顔でこちらを油断させ、無邪気に笑い、歌を歌ったり俳優やったりしたかと思えばエッセイも書き、コントもこなし、声優やらせても上手く、ラジオでは下ネタを連発し、でも、さまざまなことに対してとても思慮深く、考察が鋭い。

エッセイがすこぶる面白くて、日常生活力のなさ、ダメさ加減を臨場感いっぱいに的確に表現し、笑いへと昇華させ、さらに最後にはちょっと哲学的にまとめられてたりする。飾らず、かっこつけず、ありのままをさらけ出しています。

好きなもの、苦手なもの、考え方が自分とよく似ている部分も多くて、それがとても嬉しすぎて、ニヤニヤしながら小躍りしています。


見れば見るほど、聴けば聴くほど、読めば読むほど、ズブズブとハマってしまう星野源の魅力。
これはもう、認めざるを得ないよ……でも、やっぱり屈しない!!
なんていうか、この状況がたまらなく楽しい。



【今日のまとめ】

大泉洋×ユースケ・サンタマリア×福山雅治×宮藤官九郎×穂村弘
をかけあわせたハイブリッド種=星野源



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■箱入り息子の恋(2013年)
監督・脚本:市井昌秀
出演:星野源、夏帆、黒木瞳、大杉漣、平泉成、森山良子
【公式HP】
(C)2013「箱入り息子の恋」製作委員会


■地獄でなぜ悪い(2012年)
監督・脚本・音楽:園子温
出演:國村隼、堤真一、長谷川博己、二階堂ふみ、星野源
【公式HP】
(C)2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会

隔週水曜更新。次回の更新は1/4(水)です。

更新日:2016/12/26
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