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中部電力
今、学んでおきたい! 暮らしに関わるエネルギーのこと

今、学んでおきたい! 暮らしに関わるエネルギーのこと

「エネルギーミックスってどーゆーこと?教えて吉橋先生!」

最近、ニュースで耳にすることもある「カーボンニュートラル」や「再生可能エネルギー」という言葉。あまり聞き慣れないけど、この頃電気代が高くなったと実感している人や、政府の呼びかけで節電を心がけてる人も多いのでは。実はこれらは、私たちの暮らしにも密接に関わるエネルギー問題のキーワード。主に発電に使われるエネルギーについて考えてみましょうというのが、今回のテーマ。安定していてコストが安く、さらに地球に優しいエネルギーを使った電力供給を実現するために欠かせない「エネルギーミックス」について、WOMOモニターのふたりが名古屋大学准教授の吉橋幸子さんに教えてもらった。

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「エネルギーミックスってどーゆーこと?教えて吉橋先生!」を最後まで読んで、もっと知りたいことや、役立ったことなど意見や感想を書いて応募しよう。


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【講師】 吉橋 幸子さん

名古屋大学核燃料管理施設(大学院工学研究科総合エネルギー工学専攻)・准教授。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪大学博士(工学)。がん治療のための中性子発生装置の開発に取り組むとともに、放射線の生体影響についても研究を行っている。休日はサーフィンでリフレッシュする。


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【WOMOモニター】 鈴木 茉吏奈さん

静岡市葵区在住。静岡を中心にモデルとして活動中。俳優の仕事で全国各地に撮影で赴くことも。


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【WOMOモニター】丸山 いづみさん

静岡市葵区在住。Webエンジニアとして働く会社員。趣味は競馬。ペットはハムスター。


低炭素への取り組みと電力の安定供給の両立を目指すエネルギー政策

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吉橋)今日は、低炭素社会に向けた日本のエネルギー問題ということで、「エネルギーミックス」について考えてみましょう。おふたりは、エネルギー問題に関心はありますか?


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丸山)ガスや電気料金が最近高いなぁって思いますね。自分に直結することは気になります。

鈴木)エネルギー問題には温暖化も影響しているのかな。最近はクーラーをよく使うのも、ちょっと気になってます。

吉橋)では、低炭素社会とか、カーボンニュートラルという言葉を聞いて、なにをイメージしますか?

丸山)名前は知っているけど、内容まではわからないです。


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吉橋)カーボンニュートラルとは、簡単に言うとCO2を出してもいいけど、最終的には植物に吸収される分も含めて全体で実質ゼロにしようということです。CO2の85%は、化石燃料をエネルギー源として使う時に排出されます。低炭素社会は、CO2排出量を削減することを実現する社会のことで、この数字を減らすには、どういう発電方法がいいか考えることが大切なんです。
現在の電源構成表を見て、2050年の低炭素社会のためにはどんな風になるべきだと思う?

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[出典]資源エネルギー庁「令和3年度 エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)」を基に作成

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丸山)理想をいえば、再生可能エネルギーがもっと増えるといいと思います。

鈴木)CO2を出さないという点では、原子力、かなぁ。

吉橋)原子力発電はもっと増えてもいいと思う?

鈴木)そう言われると再生可能エネルギーがメインの方がいいかなぁ。


エネルギー政策の基本方針は、S+3Eに基づいている

吉橋)政府が打ち出しているエネルギー政策の基本方針は、S+3Eなんです。これはどういう意味か説明しますね。

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[出典]資源エネルギー庁「第6次エネルギー基本計画」を基に作成

吉橋)経済が活性化すると電力がたくさん必要です。たくさんのエネルギーを作ろうとするとCO2もたくさん排出されて、環境は破壊に向かってしまいます。一方で、環境を維持、もしくは良くするために電気を使わなければ、経済が抑制されてしまいますよね。理想は、どんな時も安定して、安く電力が供給でき、かつCO2をあまり出さないこと。さらに、これらは安全性が大前提になっている、ということなんです。このバランスをうまく取るために考えてもらいたいのがエネルギー問題なんです。安定してエネルギーを供給するためには、エネルギー自給率の向上が必要なのですが、エネルギー自給率ってどういうことかイメージしてみましょうか。

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丸山)石炭とかの限りある資源を使わないで、自分たちで生み出すようなイメージ?う~ん、難しい。

吉橋)エネルギー自給率とは、自国内でどれだけエネルギーをまかなえるか、ということです。では、日本のエネルギー自給率はどのくらいでしょうか?

鈴木)え~、全然わからないです。

丸山)再生可能エネルギーが19.8%だったから、10%くらい?

吉橋)そうですね、いい線いってますよ。では、どうして自給率を上げないといけないと思いますか?

丸山)国内の石炭とかも、いつかなくなってしまうから?将来のことを考えて節約しながら使わないといけないのかな。

吉橋)実は、今の日本のエネルギー自給率は11~12%です。1960年代は石炭や水力など国内の天然資源が中心で60%でした。その後、高度経済成長により石油を資源とすることが中心となるのですが、オイルショックを経て、エネルギー源は分散させた方が良いということになりました。また、この頃から原子力発電が普及しはじめて、2010年には日本のエネルギー自給率は20%くらいになりました。しかし2011年の東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故を受けて原子力発電がゼロになり、自給率は一気に6.5%にダウンしました。最近は再生可能エネルギーの開発や原子力発電の再稼働で少しずつ上がってはいるけれど、今のままで2030年度の自給率目標30%は達成できるでしょうか。


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鈴木)希望としては達成したい、ってことですよね。

吉橋)そう。でも、みんなでどんなエネルギーを使うのがいいか考えないと、難しいでしょう。しかも石油、石炭、天然ガスのほとんどは輸入に頼っているので、資源がなくなる以外でも考えられる問題がありますよね?

丸山)外交などで問題があったら輸入できないですね。


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吉橋)そもそも輸入はコストがかかります。世界情勢によって価格が変動したり、輸送時にかかる保険も価格に反映されます。
では、太陽光や風力、水力などの自然エネルギーを使えばいいって考えますよね。でもそれだけで、真夏や真冬の電力をまかなえると思いますか。

鈴木)無理だと思います。

吉橋)太陽光は夜発電できず、日中も雨だとほとんど発電できない。それから、風力は風が強ければいいわけではなく、安全に回せることが大事です。さらに風車の音は騒音問題にもつながります。

丸山)風力発電の風車の近くに行くと、怖いくらい大きな音がしますよね。

吉橋)このように特定のエネルギーに依存すると、災害や国際情勢の悪化で電気が供給できなくなる可能性があるんです。そこで、さまざまな発電方法を組み合わせて、社会に必要な電力を供給しようというのが「エネルギーミックス」です。

ひとつのエネルギーに依存せずに、コストを抑えて発電する

吉橋)「電力需要に対応した電源構成」の表を見てください。

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[出典]日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」および 資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)」を基に作成

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鈴木)こういう図は初めて見ました。

丸山)一番下のベースロード電源っていうのは、いつか減らすべきものなんですか?


吉橋)いいえ、ベースロード電源は、一般的な生活を送る上で必要な分です。コストが低く出力が一定の原子力や石炭、一般水力などが利用されます。その上のミドル電源は、発電量が調整しやすく比較的コストが低めの天然ガスなどを使って電力需要に合わせて発電します。さらに、もっと電気が必要な時間帯には、コストは高いけれど出力変動可能な石油や揚水式水力などのピーク電源が使われます。その上に、太陽光や風力がプラスされます。地球温暖化のことを考えたら、ベースロード電源の割り合いを2010年くらいまで戻せば、環境にもおさいふにもやさしくなります。
では今度は、2030年度の電源構成の表を見てください。

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[出典]資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需要の見通し(関連資料)」を基に作成

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[出典]資源エネルギー庁「2030年度におけるエネルギー需要の見通し(関連資料)」を基に作成

吉橋)自給率100%は現実としてあり得ないので、30%を目標にしています。経済成長による需要増加分は、私たちの省エネに対する意識の高まりや省エネ家電等の開発によって、それほどは増えないだろうと予測しています。

鈴木)再生可能エネルギーの割合をもう少し増やしたいですよね。

丸山)原子力を20%まで増やすんですか?ちょっと驚きました。

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吉橋)原子力発電の増加は気になるところですね。でも石炭や石油よりも原料が少なくて、安定性もある、CO2の排出も圧倒的に少ないことを考えると、現時点では非常に優れた発電方式と言えるんです。漠然と不安に思うのではなく、原子力発電についても知ってもらいたいと思います。現状では原子力発電所を再稼働しなければこの割合の達成は正直難しいでしょう。各電力会社さんも努力していますし、原子力発電所の安全基準も見直されています。もちろん、地元や国民の理解あっての再稼働ですが。

丸山)再生可能エネルギーを使う設備を増やせば自給率は上がるんですよね?

吉橋)そうですね、ただ今と同じだけの電力を太陽光や風力でまかなおうと思ったら、発電と送電の施設をたくさん新設しないといけないんです。運転の維持費にもお金がかかり、トータルコストは石油とあまり変わらなくなります。全国的に天気が悪かったらどこからも電気が調達できないという大きなデメリットもあります。水力発電は大きな川にはすでにダムがあり環境の問題もあって、今後それほど増えないでしょう。火力発電のメリットは、燃料の量で出力を調整できるので、太陽光のように自然まかせでなく人の手で供給力を調整できます。


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鈴木)設備や維持にお金がかかるから、コストのことを考えたら、簡単に再生可能エネルギーの割合を増やせばいいということではないんですね。

丸山)自然にも左右されるなど、再生可能エネルギーのマイナス面もきちんと知った上で、ほかのエネルギーもバランス良く取り入れることがやっぱり大切なんですね。


吉橋)コストと安定供給を考えると、火力発電も原子力発電もバランスよく取り入れていく必要があります。「エネルギーミックス」は、政策目標としての答えはあるけれど、実際は私たち国民がどうしていくのかを一緒に考ることが大切なんです。

丸山)原子力をもっと増やすというのは最初はちょっと驚いたけど、今日の話を聞いてよくわかりました。実は祖父母の家が原発の近くにあって、再稼働するために安全性が高まればいいねと話をすることもあるんです。

吉橋)電力の安定供給のためにエネルギーの自給率を上げたい、コストは下げたい、環境も守りたい。そのために「エネルギーミックス」で、いろいろな発電方法を組み合わせて必要な電力を供給しながら、2050年のカーボンニュートラルを目指しましょう、というのが、今日のお話でした。

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鈴木)エネルギー問題は、私たちの生活に直結していることがよくわかりました。メリット、デメリットをちゃんと勉強しなくちゃ。


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丸山)ニュースやCMにもでてくるカーボンニュートラルってどういうことなのかも、よくわかりました。


吉橋)日常で「エネルギーミックス」を身近に意識することは難しいけれど、電力が逼迫していますといわれた時に、今日の話を思い出してもらえればと思います。
本日はありがとうございました。

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▶応募締切:2022年9月26日(月) 23:59〆

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更新日:2022/9/13

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